
ある朝
妹からTELがあった
母を担当してくれているデイサービスの方から
インターホンで呼んでも母が出て来ないとの
連絡をいただいたと
合鍵の場所をお伝えし
部屋に入っていただいたと
母は部屋の中で倒れていて
息をしていないかもしれないと
ーーーーーーーーーー
電車で
母の住む公団へ向かった
妹夫婦はすでに到着していた
担当のケアマネさんも駆けつけて
われわれの到着を待っていてくれたらしい
救急隊はAEDなど蘇生を施したが
反応がなく既に引き揚げていて
警察官が現場検証をしていた
その後
遺体は検死のため警察署へ搬送された
明日の午前10時過ぎに
迎えに来て欲しいと言われた
ーーーーーーーーーー
翌日
妹と共に警察署へ出向き
監察医から説明を受けた
彼によれば
脳脊髄液は清明だったが
心嚢に血腫が認められており
心筋梗塞か大動脈解離による死亡
との見立てだった
ーーーーーーーーーー
母とは
ちょっとした用事があって
2日前に会ったばかりだった
相変わらず
短期記憶が弱っているものの
コミュニケーションは全く問題なく
バスに乗り遅れないよう
走り出すほど元気だった
ーーーーーーーーーー
そんな母も
5年前に父を亡くしてからは
ひとりでいることが淋しいと
口にするようになった
しかし母は
われわれに迷惑を掛けぬよう
ひとりで頑張っていた
食卓の上に
解きかけのクロスワードと
芯の丸くなった短い鉛筆が
残されていた
今思えば
一緒に暮らしたり
近くに暮らしたり
してこなかったことが
悔やまれる
ーーーーーーーーーー
母が元気であることをいいことに
出来たはずの孝行を先延ばしにしてきた
卑怯な倅がひとり
ここにいる
